Ripple が取り組んでいる国際送金における課題
Ripple は低コストの国際送金を実現し、今インターネットで情報を交換しているような簡単さで、お金を移動できるようにすることを目指しています。
「 Our goal is to lower the marginal cost of international payments to the point where money can move as easily as information does today. 」
Brad Garlinghouse, CEO of Ripple
昨今の仮想通貨ブームにより、XRP の価格の行方ばかりが話題になっていますが、一方で、Ripple 社が取り組んでいる課題や、解決方法の中での XRP の位置付けについての理解はあまり進んでいないように思います。Ripple 社が目指している価値のインターネット ( Internet of Value ) が実現した世界や、ブリッジ通貨としてXRP(あるいは他の仮想通貨)が日常的に使われる世界が到来した際に、どんな変化や影響があるのかを考える上でも、まずは前提となる課題感を整理して見たいと思います。
現状の国際送金の課題
現在の国際送金は SWIFT を使って行われています。海外送金をした事がある方は、送金先の銀行の SWIFT コードを書く必要があったと思いますが、あの SWIFT です。SWIFT は世界中の銀行に、通信メッセージの送受信サービスを提供しています。銀行はSWIFT メッセージを使う事で、どの銀行の誰の口座に送金したい、というような指示を 出す事ができます。
SWIFT では指示を出すだけで、実際のお金の移動 ( 口座残高の増減 ) を銀行間で行う必要があります。国内での送金であれば、中央銀行 ( 日本の場合は日銀 ) が中継役となり、中央銀行に開設された各銀行の口座残高を増減させる事で、銀行間の資金移動を行います。
しかし、国をまたいだ国際送金の場合は、中央銀行のような仕組みがありません。なので、銀行同士が口座を開設しあい、その口座の残高を増減させる事で資金移動をします。全世界の銀行同士が互いに口座を開設しあって処理するのは大変なので、実際はコルレス銀行と呼ばれる中継銀行が口座を開設しあって処理し、その他の銀行は国内のコルレス銀行を中継して国際送金を行います。
SWIFT やコルレス銀行を用いた国際送金の仕組みについては、下記の記事で丁寧に説明されています。
Ripple が提供するソリューション
さて、SWIFT はインターネットが生まれる前から使われてきた仕組みですが、ここまで理解すると国際送金が非常に複雑かつ様々な中継地点を経て行われている事がわかります。SWIFT で送金指示を送り、それが銀行間を伝っていき、各口座残高の増減を確認しながら、最終的に送金人・受取人の残高を正しく増減する。この過程において、SWIFT のシステムを運用するコストはもちろん、銀行間で開設しあった口座にある程度のお金を入れていつでも国際送金が行えるようにする流動性のコストもかかります。
そこで、Ripple はブロックチェーンの技術を活用して、新しい国際送金の仕組みを作っています。現在 Ripple の Web サイトでは xCurrent, xRapid, xVia という3つのソリューションが提示されています。
xCurrent は SWIFT に代わるようなメッセージングと口座残高調整の仕組み、xRapid は XRP を用いた流動性の確保の仕組み、そして xVia はこのような Ripple の送金ネットワークを事業会社が API を通じて利用できる仕組みとして発表されています。国際送金のコストは、xCurrent の導入による運用コストの削減や送金スピードの短縮による流動性コストの削減と、さらに xRapid の導入によって XRP を活用したさらなる流動性コストの削減の2段階です。
銀行コストの削減例 ( Ripple ) より
xCurrent は金融機関向けのソリューションだとして、個々人として気になるのは XRP がどこで使われるのか、保有にはどんなメリットがあるのかという点。また事業者としては xVia のような API で簡単にこれらの仕組みが使えた場合に、どのようなビジネスチャンス、自社のサービス改善があり得るのかという点だと思います。これらの点についての考察は、またの機会に。
参考リンク
Ripple の公式サイト
ソリューションに関する簡潔な説明や公式発表等
Quora での Ripple の CEO、Bad Garlinghouse 氏による Q&A
Session with Brad Garlinghouse - Quora